現在のデータセンターを支える接続技術が、物理的な限界に近づき始めると何が起こるでしょうか。接続速度の高速化によって銅線接続と光接続の境界線がどのように変化し、新たな手法への扉がどのように開きつつあるのかについて、ブロディー・ゲイジが解説します。

AIはデータセンターのほぼ全ての面に変化をもたらしています。それはたとえば、私たちが展開するコンピューティングの量、データセンターに対する電力供給や冷却の方法、データセンターのパッケージングといった点です。また、データセンターを接続する方法についてもますます変化が進んでいます。

私はここ数年、世界最大クラスのクラウドプロバイダーやサービスプロバイダーとの間で、彼らのネットワークに対するAIの意味について語り合うことに多くの時間を使ってきました。その中でますます明確になってきたことが1つあります。それは、AIインフラの拡大に伴い高速接続が物理的な問題に直面しているということです。

そして、それがエンジニアリングに関する興味深い課題を生み出しています。

AIスイッチのASIC(特定用途向け集積回路)は急速な進化を続けています。電気的I/Oレーンの速度は50Gから100Gや200Gへと進歩し、現在では400Gも視野に入ってきました。通常は1インターフェース当たり8本の電気的レーンを使用するため、これは相互接続速度が現在の800Gと1.6Tから3.2Tおよびそれ以上へと変化しつつあることを表しています。

When speed changes the physics of data center connectivity

図1:AIスイッチのI/Oレーン速度は急速に上昇し400Gも視野に入る

しかし、速度の上昇に伴い、以前の各世代ではうまく機能した接続性の前提条件が変化し始めています。

速度の上昇と伝送距離の縮小

電気信号は伝送速度が上昇すると非常に遠くへ伝送することが難しくなります。レーンレートの上昇によりパッシブ銅線の伝送距離は縮小しており、信号の整合性を維持するためには高度な処理がますます必要となっています。

これはAIデータセンターにおける非常に重要な問題です。

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図2:パッシブ銅線の伝送距離縮小に伴いスケールアップの伝送距離が伸長

AIクラスターは、XPUとスイッチ間およびスイッチとスイッチ間における膨大な数の高速接続に依存しています。低速の場合、業界ではこのような短距離リンクの多くを、安価で消費電力の少ない銅線接続に大きく依存することができました。

しかし、ある世代では機能していた銅線ケーブルが、次の世代では十分に遠くまで伝送できなくなったら何が起きるでしょうか。  速度が上昇しても銅線の実用性を維持するにはどうすればよいのでしょうか。

アクティブな電子製品を用いれば信号の整合性を改善し損失を補償することは可能であり、銅線接続の伝送距離をパッシブケーブルより伸ばすことができます。しかし、最終的には、物理学と経済学の面から光通信への移行が有利となります。

銅線はその伝送距離、電力、コスト、遅延が有意義であれば今後も非常に高い価値を維持するでしょう。しかし、速度の上昇に伴い、銅線と光通信との境界線はコンピュートの側に近づいています。

光接続も固有の物理的課題に直面

銅線から光ファイバーへの移行により伝播の問題が1つ解決します。しかし、容量の拡大が続き、データセンターやキャンパスを越えて接続が延伸するようになると別の問題が発生します。

データセンター内部における現在の光エコシステムは、主に強度変調・直接検波(IMDD)を中心として構築されています。この方式は大きな成功を収めてきました。IMDDは比較的簡単で費用対効果が高く、光通信が巨大な規模へと拡大することを可能にしてきた幅広いエコシステムに支えられています。

しかし、IMDDによる光通信も物理学から逃れることはできません。

データレートの上昇に伴い、必要な伝送距離を達成することはますます難しくなっています。また、課題は伝送距離だけはありません。光回路スイッチ(OCS)を組み込んだ新しいアーキテクチャーが、これまでになかった損失を光通信経路に持ち込んだため、光通信はリンク損失バジェットの上昇に対応することが必要となっています。この課題が特に興味深いと感じられるのは、接続がOCSファブリックの各所に拡大し、ラックや建物を越え、大規模AIキャンパス全体に広がっていくのを目にするときです。

従来のIMDDはどこかの時点で限界に達し、必要な伝送距離や損失バジェットに対応できなくなります。そこでコヒーレント光通信の登場です。

コヒーレント光通信は私たちが目にする第2の大きな技術変革を生み出します。それがIMDDからコヒーレント光通信への移行です。

また、銅線から光通信への移行と同じく、IMDDからコヒーレント光通信への移行もあらゆる場所で同時に起こるわけではありません。

答えは1つではなく、1つだけである必要もない

この進化について非常に興味深いのは、正しい接続技術はどれかという答えが、速度、伝送距離、損失バジェットの組み合わせにますます左右されるようになっていることです。

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図3:単一の相互接続技術ではあらゆる速度と距離に対応できない

伝送距離が短い場合は、銅線の優位性をできる限り維持することが目標となります。電気的速度が上昇し銅線の伝送距離が縮小すると光通信はスイッチASICに接近し、コパッケージ光学(CPO)やニアパッケージ光学(NPO)に関する新しい事業機会を生み出します。さらに距離が離れると、従来のIMDDによる光通信の高い効率性が維持されます。そして最終的には、速度、伝送距離、リンク損失の要件が上昇を続けると、私たちがこれまでコヒーレント光技術を真剣に検討しなかったようなところで同技術が有意義となります。

つまり、次世代のAIインフラは単一の相互接続技術を中心として構築されるものではありません。次世代のAIインフラには、速度、距離、電力、密度、遅延、信頼性、コストのさまざまな組み合わせに対して最適化された連続的な技術群が必要となります。

これはデータセンターの内側で起きていることを私が面白いと思う理由の1つです。

成熟市場は新たな問題に直面

従来、建物内にあるデータセンター相互接続エコシステムは例外的に厚遇されてきました。さまざまな半導体、ケーブル、光学機器、コネクター、システムサプライヤーが効率的で大容量のエコシステムを構築し、広く認識されているアーキテクチャーと技術的境界線の周囲でそのエコシステムを最適化してきました。

現在ではAIがその境界線に接近しつつあります。

そのような状況となった理由は、それらの技術が突然役に立たなくなったからではなく、私たちがそれらの技術に何か新しいことを求めているからです。

私たちは電気信号が非常に高速で伝送されることを求めています。私たちは光通信が省スペースかつ省電力で帯域幅を拡大してくれることを求めています。私たちは光学技術をスイッチASICに近づけています。そして私たちは、慣れ親しんだ光学アーキテクチャーに、トレードオフが成り立たなくなるような速度と伝送距離で稼働してくれることを求めています。

運用ポイントが変われば、それに伴って最適な技術も変わる可能性があります。それは新しいイノベーションの波を実現させようとしているのです。

私たちにとって非常になじみ深い問題

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Cienaにとって、データセンターの内部や周辺で発生しているエンジニアリング的課題の多くはなじみ深いものです。

私たちは数十年にわたり世界最大のクラウドプロバイダーやサービスプロバイダーと協力して、ネットワーキング最大の難題である信号伝播問題を解決してきました。私たちは、高速アナログ電子工学、シリコン・フォトニクス、DSP、パッケージング、光学、システムとリンクエンジニアリングの専門能力を組み合わせ、電気信号と光信号を物理的限界まで近づけてきました。

従来、そのようなイノベーションの大半は、データセンター間、都市間、国家間、大陸間など、一段と長距離化していく区間で大量のデータを移動させることに応用されてきました。

現在は、それらと同じ基本的な工学分野の多くがデータセンターの内部や周辺で一層重要となっています。

距離は短くなり、経済性やアーキテクチャーは変わったかもしれませんが、基本的な問題は、

「データを高速で遠距離まで伝送し、しかも電力、スペース、遅延、コストを最小化するにはどうすればよいか」という実になじみ深い問題です。

私たちはこの問題を熟知しています。

そして重要なことは、私たちが1つの技術だけを用いてそれに取り組んでいるのではなく、1つの技術を全ての用途に応用しようとしているのでもないということです。私たちは、接続に関する問題の連続的な広がりの中で、さまざまな点にさまざまな技術ポートフォリオと専門性を投入しています。

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図4:AI相互接続分野で連続的に広がるCienaのポートフォリオ

異なる課題には異なる手法が必要

私は今後3回のブログで、Cienaのチームがお客様や全体的なエコシステムと密接に協力して上記の新しい課題に取り組んでいる3つの領域を掘り下げる予定です。

  • スケールアップ:電気的レーンの速度が上昇する中で、当社のリニア・リドライバー技術であるNitroが銅線の耐用年数と伝送距離をどのように拡張できるか。
  • 次世代のスケールアップとスケールアウト:光接続がASICに接近する中で、当社の光学エンジンであるVestaが新しいNPOアーキテクチャーとCPOアーキテクチャーをどのように実現するか。
  • キャンパス接続:私たちが、数十年にわたるWaveLogicコヒーレント光通信技術の専門能力をどのように応用してCoherent-Liteを開発しているか。Coherent-Liteは新しいクラスのコヒーレント光通信技術であり、短距離AI接続における電力、コスト、遅延、伝送距離の各要件について最適化したものです。

これらは大きく異なる用途ですが、同じ基本的トレンドが背景にあります。それは、AIが相互接続の速度を引き上げ、従来の接続技術の実用的限界を超えようとしているというトレンドです。この動きが、銅線と光通信との境界線や、IMDDとコヒーレント光通信との境界線を動かしています。

私たちはこれまでにも技術の境界線が動くのを目にしてきました。実際に、Cienaの歴史のかなりの部分が、高速接続の物理特性が変化した場合に何が生じるかを解明することにまつわるものです。

AIは今、それらと同じ課題の多くをデータセンターの内部や周辺に持ち込んでいます。

そして、楽しいのはここからです。