ネットワーク事業者による三者三様のIP/オプティカル統合
Heavy Reading社の最新のグローバル・サービス・プロバイダー調査によると、87%のプロバイダーがIP/オプティカル統合は自社の次世代ネットワークにとって重要であると考えています。* これは、お客様からお話を伺っている内容と一致しています。 新たな方法でネットワークを構築し、より高品質なエンドユーザー・エクスペリエンスを提供することに対して、業界では大きな期待が生まれています。新たな方法では、コヒーレント・プラガブル光モジュール、最新のIPプロトコル、プログラマブルなオープン・インターフェイス、マルチレイヤー/マルチベンダーの集中化されたソフトウェア制御などの最新の革新技術を組み合わせて活用します。
IP/オプティカル統合に関連するメリットと機会は何でしょうか。 また、依然として解決しなければならないネットワーキングの考慮事項と課題とはどのようなものでしょうか。最近、この話題についてOFC Conferenceのパネルディスカッションでモデレーターを務めさせていただきました。クラウド事業者(Microsoft)、サービス・プロバイダー(Telia Carrier)、マルチサービス事業者(Cox Communications)の3社の代表者の方々が登壇し、重要かつ興味深い見解を披露してくださいました。 ここでは、セッションで披露された重要な見解をいくつかご紹介します。
メトロ・データセンター相互接続のスケールアップ/ダウン
パネルディスカッションの最初のセッションは、Microsoft社のAzure Networkingの主任ネットワーク開発者であるヤアウェイ・イン(Yawei Yin)氏の「From PAM4 to Coherent 400G-ZR:the joy and pain when DWDM optics marry routers(PAM4からコヒーレント400G-ZRまで:DWDM光モジュールがルーターに搭載された場合のメリットと課題)」でした。イン氏は、顧客はAzureのメトロおよび長距離の要件(高可用性、高い信頼性、高い安定性、広帯域、低遅延)をいかに定義する必要があるかについて語りました。
メトロDCIアーキテクチャーについては、2ms未満の仮想マシン(VM)間レイテンシーを達成して高品質なエンドユーザー・エクスペリエンスを保証することが重要であるという興味深い見解を披露してくださいました。それに加えて、データセンター相互接続(DCI)向けに選定されるアーキテクチャーは、標準の統一された導入/運用モデルを提供する必要があり、一言で表現すれば、「シンプル・シンプル・シンプル」。急速な成長に合わせてスケールアップ・ダウンできるものでなければなりません。現在、リージョナル・ネットワークのゲートウェイ間のMicrosoftネットワークの相互接続トラフィック需要は、データ容量が6Pb/s(= 6,000,000 Gb/s)を超えており、人工知能の利用が拡大し始めているので、この容量は増え続けると予想されています。
Microsoft社は、ルーターと100G PAM4光モジュールによる構成から、400G対応ルーターと400ZRコヒーレント・プラガブル光モジュールによって構成されるDCIアーキテクチャーにアップグレードする予定です。間もなく実現する400ZRへのアップグレードにより、さまざまなメリットがもたらされることが期待されています。たとえば、光チャネルのビットレートは4倍に向上し、ビットあたりのコストは50%以上削減し、チューナブル・レーザーによりOPEXが低減し、コヒーレント光モジュールによるPAM4からのパフォーマンス向上によってネットワークがより安定したものになります。
IPネットワーク拡張の機会
2番目のセッションでは、Telia Carrier社の副社長兼チーフ・エバンジェリストであるマティアス・フリードストローム(Mattias Fridström)氏が、間もなく登場する400ZRとZR+のコヒーレント・プラガブル光モジュールのすばらしい機会について議論しました。これらの光モジュールにより、IPネットワークをより効率的に稼働し、現状の段階からIPネットワークを成長させることができます。
フリードストローム氏の説明によると、Telia Carrier社のネットワークは半分がIPトラフィックの伝送に使用されており、これらのリンクのうちの30%は通信距離が40km未満であり、必要な容量は400G未満であるということです。400ZRをこれらのアプリケーション向けに使用することで、Telia Carrier社は60~80%のコスト削減を見込むことができ、より多くのサイトに装置を追加導入し、ビジネスを拡大することができます。 コスト削減に加え、「夢のシナリオ」であるプラグ・アンド・プレイによって装置の台数、設置面積、消費電力、障害などを削減できるメリットがクローズアップされています。
Telia Carrier社は、2021年中に400ZRの導入を開始する予定です。まず、新規アプリケーションから導入を開始し、既存のIPネットワークに拡大していきます。Telia Carrier社の懸念事項は何でしょうか。取り組むべき最も重要なことの1つは、既存の標準にかかわらず、多様なハードウェア・ベンダーの製品を最適に組み合わせることです。400ZRは、相互接続可能なマルチベンダー・コヒーレント光モジュール市場に初めて登場した製品となるので、この点が重要な考慮事項になります。
単なる光モジュールを超えた存在
3番目のセッションでは、Cox Communications社の光ネットワーク設計プリンシパル・アーキテクトのサウラブ・パティル(Saurabh Patil)氏が登壇しました。パティル氏は、光モジュール以外にも話題を広げ、統一された導入と、コヒーレント技術のさまざまなオプションをすべてサポートできる柔軟性を実現する、ディスアグリゲーション型の柔軟なCDC通信システムとメトロにおける集中化されたマルチベンダー・ソフトウェア制御の重要性に触れました。 また、卓越した追加機能であり、便利なツールでもある、400ZRにも焦点をあてました。パティル氏は、さまざまな技術を組み合わせたネットワークをCox社がいかに設計しているかについて鮮やかに解説しました。Cox社は、柔軟性を提供するためにROADMを導入する一方で、最適な組み合わせのコヒーレント光モジュールをサポートするためにMxN WSS技術を利用しています。高パフォーマンスのコヒーレント光モジュール(800G、1.6T、未来に対応可能な容量)や、ZRとZR+のコヒーレント・プラガブル光モジュールなどを組み合わせて使用します。 パティル氏の指摘は、ここ2、3年で急速に加速したコヒーレント技術の革新スピードを念頭に置いたものであり、非常に的を射ています。
パティル氏の説明によると、Cox社はメトロで1G、10G、OTNのサービスや波長サービスなどの多岐にわたるサービスを管理し、あらゆる顧客サービス需要に対応するために迅速な適応性を備えたいと考えています。ROADMは、ネットワーク全体にわたってトラフィックを効率的に経路指定するために必要な柔軟性を提供します。400ZRは、もう1つのトランスポンダーであり、アーキテクチャーを変更するのではなく、アーキテクチャーに合わせて調整するための技術です。パティル氏の説明では、すべてのルーターを400Gコヒーレント・プラガブル光モジュールに対応する新しいルーターにアップグレードすると、全面的な装置交換が必要になるので、Cox社は実用的な方法として、必要と判断したタイミングで最も効果を発揮する場所でルーターに搭載するコヒーレント・プラガブル光モジュールを利用しています。
まとめ
ネットワーク事業者は、ネットワークの拡張と変革の作業が継続しているときに、新しいIPと光の技術を活用する方法とそれらの技術をネットワークで運用化する方法を選択することになるはずです。OFCセッションでは、IP/オプティカル統合では「画一的な方法」というものは存在せず、何が適切な方法であるかはビジネス要件によって決まることを再確認しました。リアルタイムに展開しているエピソードであるため、間もなく必要になるさまざまな教訓を学べるはずです。卓越した見解とこれまでに学んだ教訓を紹介してくださった講演者の皆様に感謝いたします。
*「IP Optical Convergence Global Survey」Heavy Reading社、2021年5月、回答数=220