マルチレール・フォトニクスは光ネットワークの規模を新時代へと導く技術であり、波長チャネルを最大限に収容した数百もの光ファイバーペアを並列に運用できるようにします。本稿では、Cienaの実績あるRLSを基盤としたRLS Hyper-Railが、最大32倍の高密度化を実現するとともに、ハイパースケール環境でのマルチレール方式の実運用に必要な機能をどのように提供するのかを、ポーリナ・ゴメス(Paulina Gomez)が解説します。
AIの登場と発展は、ネットワーク帯域の拡大をもたらしているだけでなく、光ネットワークの規模の単位までをも変えようとしています。光ネットワークは過去数十年間に大きく拡大しましたが、そこには段階的な波長の追加とファイバーペア数の増加がありました。そのモデルはAIインフラによって変わりつつあります。ハイパースケーラーが大規模なコンピュート・クラスターをキャンパスや地域に分散配置し、さらにその先へと拡大していくのに伴い、フォトニック・レイヤーには、1つの波長や1組のファイバーペアを追加使用できる能力だけでなく、フル搭載の数百組ものファイバーペア(レール)も平行稼働できる能力も同時に求められるようになっています。
これは基本的にスケーリングにおいて以前とは異なる課題であり、CienaのRLS Hyper-Railはその解決を目的としたものです。
マルチレール・フォトニクスは、特に中間ライン・アンプ(ILA)局がスペースや電力の制約を受けやすいルートなどにおいて、AI接続を拡大する手段となります。ただし密度と電力効率が全てではありません。ハイパースケール環境における多数のファイバーペアの実際の導入、運用、保守には、次のような新たな課題が伴います。
- エラーの可能性を増やさずにどうやって多数のファイバーペアを導入するか
- 煩雑性を倍増させずにどうやってターンアップを迅速化するか
- 問題が発生した場合に、著しく高密度なインフラの中でどうやってそれをすばやく正確に特定する
実績あるRLS基盤上でのマルチレール構築
CienaのRLSは世界最大の導入実績を誇る業界標準の分散型光通信システムであり、RLS Hyper-Railはその次世代の進化形です。大規模なAI接続向けにハイパースケーラーと共同設計したRLS Hyper-Railは、RLSにすでに組み込まれている実績あるソフトウェア、自動化、計測機能、オペレーション機能、導入ノウハウを新しい超高密度マルチレール・アーキテクチャーに融合したものです。

そのような基盤には重要な意味があります。RLS Hyper-Railはゼロからスタートするものではないということです。Cienaはこれまでに習得したハイパースケール環境におけるフォトニック・インフラの設計と運用に関するノウハウをRLS Hyper-Railに投入し、新たな規模拡大への対応を図っています。すでにRLSを運用中のお客様がマルチレールに移行する場合は、お客様のチームがすでに熟知しているプラットフォーム上で、同じソフトウェアや運用モデルを利用しながら、導入リスクを抑えて進めることが可能となります。
では、そうしたRLS基盤は実際に何を実現するのでしょうか。RLS Hyper-Railが、運用上の煩雑性を無駄に増やすことなくAIネットワークに必要な規模に対応できる5つの理由を以下に示します。
1. ラック当たり容量の大幅な拡大
AIクラスターは大規模化に伴って地理的分布が一段と広がっています。これは利用可能な電力や不動産を有効活用するためです。複数の地域にまたがるような距離の伝送にはILA局が必要不可欠です。スケールアクロス型ネットワークやAIバックボーン・ネットワークでは、数百組のファイバーペアを介した毎秒数十ペタビット(Pb/s)の容量が必要となる場合があります。
従来の通信システム・アーキテクチャーはそうした現実に即した設計となっていません。ファイバーペアが増えれば、アンプ機器、ラックスペース、電力、冷却装置や、それを支えるインフラも大幅に増加します。
RLS Hyper-Railはそのような状況を変えます。アンプ、モニタリング、制御を超高密度モジュールに統合したRLS Hyper-Railは、モジュール当たり最大4組のファイバーペアおよびラック当たり最大128組のファイバーペアに対応しています。
RLS Hyper-Railでは、従来の手法と比較して最大32倍のラックレベル密度拡大、最大75%の電力節減、最大85%のスペース削減を実現しています。そしてこの「32倍」には重要な意味があります。この数値は、ラック当たり12kWが上限となる現実のILA環境で実際に電力供給可能な密度を表しており、1つのラックに物理的に搭載できる光装置数の理論的な計算値ではありません。

同一スペースに収まる光装置数を増やすことが目標ではなく、それらの拠点ですでに確保しているスペースと電力を利用して容量を大幅に拡大することが目標なのです。
2. 迅速で整合性の高い大規模展開
1つのラックに詰め込むファイバーペアの数を増やせば密度の問題は解決します。ただし、その方法では運用の問題は解決できません。
1組のファイバーペアを想定したプロセスを使用して数百組のファイバーペアをターンアップすることをご想像ください。接続数が増え、プロビジョニング作業や手動検証も増えるため、不整合やエラーが発生する可能性も上昇します。
実績あるオペレーショナルなRLS基盤を用いてスタートする意義はここにあります。RLS Hyper-RailはRLSと同じマイクロサービス・ベースのソフトウェア・インフラと運用モデルを使用しており、事業者はオープンAPI、モデル駆動型構成、ストリーミング・テレメトリーを用いてRLS Hyper-Railを既存のバックオフィス・ワークフローに統合することができます。

その結果として、まったく新しいフォトニック・レイヤー運用管理方法の採用を事業者に強いることのない新しいマルチレール・アーキテクチャーが実現します。
また、ターンアップもさらに容易になります。RLS Hyper-Railは、1レール当たりで必要となるカード、ポート、ファイバー、プロビジョニング手順の数を削減します。自動化されたワークフローがサーキットパック、スパン接続、ファイバーの健全性をアクティベーションの前に検証します。直感的な視覚的インジケーターにより、技師は接続の有効性とシステムの利用可能状態をその場ですぐに確認することができ、自動スパン校正により各セクションの特性評価が正しく行われることを確実にします。
その目的は、大規模な導入に関して、初回の接続でも100回目の接続でも同じ一貫性と信頼性を維持するというシンプルなものです。
3. ターンアップから運用に至るまでの可視化
極めて高密度なインフラを通じて数百組のファイバーペアが稼働している場合、可視化機能を後で付け足すようなことは考えてはなりません。RLS Hyper-Railは高度な計測機能をシステムに直接組み込んでおり、事業者はネットワークのライフサイクル全体を通じてスパンの健全性、光パワー、ファイバーの特性、障害発生の可能性に関するリアルタイム分析を得ることができます。
高解像度光チャネルモニタリング(OCM)、双方向OTDR、自動ファイバー特性評価などの組み込み機能が、外部テスト機器や手動プロセスへの依存度を低減します。ファイバーの種類に関する仮定や手動で収集したデータに基づいて作業を行うのではなく、自動ファイバー特性評価によってスパンの長さと損失を測定します。それを通じて、各種のファイバーや未知のパッチパネル損失が混在する環境であっても正確なリンク・バジェットが得られます。

それらの機能により、導入の過程において、自動テスト、スパン校正、接続検証、ファイバー問題の早期特定が可能になります。ネットワークが稼働を開始すると、継続的なストリーミング・テレメトリーと組み込みOTDRにより、事業者は問題をすばやく正確に特定して切り分けることが可能になるとともに、ネットワークの規模拡大に合わせてパフォーマンスの最適化を行うことができます。
4. 影響範囲の拡大を伴わない高密度化
ラック当たり容量を大幅に増やせば信頼性に対する要求水準も高まります。単一の障害によって複数のレールにリスクが生じるのは望ましいことではなく、システムの密度が上昇しても保守は引き続き容易でなければなりません。
そのため、マルチレールは完全な1つのシステムとして扱う必要があり、少ないスペースに詰め込む光コンポーネントの数を単に増やしたというものではありません。
RLS Hyper-Railは、当社が長年にわたり構築してきたフォトニック・システムの専門知識と、豊富なRLS導入実績から得た運用経験を活用しています。
組み込みの冗長性がシステムの可用性を支え、保守を簡素化します。集中管理により、モジュールのステータス表示、電力モニタリング、ファームウェア管理、安全な構成バックアップの機能を提供します。
また、同じく重要なことですが、各ファイバーペアは独立して作動するため、1組のペアに障害が発生しても他のペアには影響がありません。これは障害の封じ込めに寄与し、各ラック内に集中した大容量を保護することができます。以上をまとめると、そのような設計上の選択は、マルチレール・システムがどのようにパフォーマンスを発揮するかだけではなく、実際のネットワークでの運用や保守においてどのような信頼性を持ちうるかにも対応しています。
5. 現場の現実に沿った構築
高密度化は、お客様が現場で直面する現実にシステムが適応する場合に限り効果を発揮します。
スパンの長さ、ファイバーの種類、アンプ要件、電力枠はネットワークによって異なります。十分な電力と深いラックを備えた近代的な施設がある一方で、1ワットや1ミリメートルが重要となるレガシーなILA設備もあります。
RLS Hyper-Railはそうした現実を念頭に置いて設計されています。300mmと600mmのバリエーションをご用意し、ラック当たり電力がわずか数キロワットの旧型拠点から、高密度ラックに対応可能な新しい施設まで、さまざまな環境に対応しています。C&LバンドのEDFAおよびEDFA-Raman構成により、各事業者個別の伝送距離やパフォーマンスの要件に合わせて導入を最適化できます。
また、このアーキテクチャーはILA局に限ったものではありません。RLS Hyper-Railはターミナル拠点での導入も可能であり、マルチレール・アーキテクチャーのネットワーク全体への拡張に合わせた柔軟な展開を支援するソリューションを事業者に提供します。
RLS Hyper-Railがハイパースケール環境のAI接続向けにマルチレールを実現
AIは光インフラが実現すべきことを再定義しつつあります。ネットワークが拡大して数百組ものファイバーペアが並列稼働するようになると、密度への対応だけでは十分ではありません。つまり、マルチレールの展開と運用を実現するソリューションが必要になるということです。
RLS Hyper-Railはそのような変化に対応すべく専用設計されたものであり、AI接続の効率的な拡大に必要な自動化、可視化機能、柔軟性、システムの専門知識、信頼性を超高密度フォトニクスと融合させています。また、RLS Hyper-Railは、ゼロからのスタートではなく次世代RLSという位置付けであるため、マルチレールの導入、運用、保守を困難にすることなく、実績ある基盤の上で拡大を実現できる容量をお客様に提供することができるのです。




