AI主権が政策論議からインフラの現実へと移行する中、規制に準拠した高性能なAIエコシステムの実現という大きな役割を通信サービス事業者(CSP)が担う絶好の機会が生まれていることを、Cienaのフランシスコ・サンタンナが考察します。

AIは過去2年間にわたりネットワーキング業界を象徴するテーマとなっており、その中でもAI主権は特に重要な要素として存在感を高めています。つい最近まで主に議論の対象であったこのテーマは、現在ではテクノロジーのエコシステム全体において、多額の投資、政策イニシアチブ、課題、そして機会をもたらしています。地政学的な不安定さの高まりに加え、AIの経済的および戦略的重要性が増していることから、この問題は政府や業界の重要課題として位置付けられるようになっています。

データ主権、プライバシー、統制、地政学

AIが経済成長と国家競争力を支える重要な原動力となるにつれ、各国政府は、それを実現する重要インフラと、それらを接続するネットワークを国家戦略上の重要課題として位置付けるようになっています。かつて主に領土の観点から捉えられていた主権は、現在ではデジタル領域にも広がっています。主権はますます、データやコンピューティング能力だけでなく、AIワークロード、ユーザー(人とマシン)、モデル、データソースを結ぶ接続性をどの程度管理できるかを示すものになっています。

各国は、国内のAIインフラと管理を推進するための政策、場合によってはそれらを義務付けるための政策を導入しています。その目的は、AIワークロードを国内の管轄下で運用し、データを国内で保存・管理するとともに、モデルを国内または信頼できる地域内でホストすることにあります。

地政学や経済的自立の観点に加え、データ主権が重要であるもう一つの理由は、それが各国の法律や規制の執行可能性を支えるためです。データ保護やプライバシーから、適法なアクセスや調査権限に至るまで、居住者のデータがどこで保存、処理、管理、送信されるかを管理することで、データが経由またはホストされる可能性がある外国の管轄ではなく、自国の法的枠組みが適用されることを確保できます。

AI主権に対する多様なアプローチ

規制当局、立法機関、政府は、重要性を増すこの政策課題を前進させるため、積極的に取り組んできました。AI主権はもはや高次の戦略にとどまらず、インフラ政策として具体化しつつあります。

ソブリンAIは多岐にわたる具体的な政策モデルを通じて世界中の国々で形作られています。EUは地域全体で連携するコンピューティング基盤をAIファクトリーや計画中のAIギガファクトリーを通じて構築しており、カナダインド韓国英国などは、国家レベルのコンピューティング戦略、官民連携によるインフラ整備、直接投資を通じてソブリンAIを推進しています。 フランスは、関連するモデルをAI能力の強化を支援するクラウド主権およびデジタル主権施策を通じて示している一方、ブラジルは公共部門のデータ向けに主権クラウドを推進しています。また、シンガポールはAIインフラ政策を電力、土地、炭素排出枠の確保状況と直接結び付けています。

これらの政策は、ネットワーキング・エコシステムに大きな影響を及ぼします。

ネットワーク事業者にとっての機会

地域ごとのAIインフラが拡大するにつれ、大容量、低遅延、高セキュリティーで、ポリシーに対応した相互接続を必要とする拠点の数が急速に増加しています。AIワークロードは単独で動作するものではなく、データセンター、クラウド環境やエッジ環境、企業ユーザー、分散したデータソースの間で次々とデータが流れることに依存しています。さらに主権要件が加わることで、ネットワークは単なるトランスポート層ではなく、ポリシーを実現する基盤としての役割を担うようになります。

この変化により、国家を代表するテクノロジー・リーダーと見なされることの多いCSPには、より広範かつ戦略的な役割が求められています。CSPは、自らがサービスを提供する地域やコミュニティーに対して強くコミットし、政府、企業、デジタルインフラ事業者との深い関係を築いていることから、ソブリンAIエコシステムにおいて次の4つの分野で重要な役割を果たす位置付けを獲得しています。

  • 主権を確保する接続性
    CSPは、ソブリンAIエコシステムにおける信頼できる基盤として、AIデータセンター、クラウド環境、エッジ拠点、企業拠点、公共部門の環境にわたって、安全で大容量かつ低遅延な、ポリシー対応の相互接続を提供できます。これには単なるデータ伝送にとどまらず、義務付けられた管轄区域内にトラフィックを維持すること、国内または地域内に配置された推論環境を接続すること、分散化がさらに進むソブリンAIアーキテクチャー全体でレジリエントなデータ移動を実現することも含まれます。
  • AIインフラ
    一部のCSPは、接続性の提供にとどまらず、GPU-as-a-Service、エッジAIインフラ、あるいは自社所有、合弁事業、戦略的パートナーシップを通じたAIデータセンター構築への直接的な参画へと事業を拡大する可能性があります。市場が正しければ、これにより通信事業者はソブリンAIの価値創出の中心により近い立場を占めることができます。一方で、これは多額の資本を必要とする取り組みであり、稼働率、エネルギー、運用に関する相応のリスクも伴います。そのため、十分な事業規模、市場環境、政策支援、パートナー・エコシステムを備えた事業者に最も適したアプローチと言えます。
  • ソブリンAIプラットフォームとソリューション
    CSPは、厳格な主権要件に準拠したAI Software-as-a-Service(SaaS)およびPlatform-as-a-Service(PaaS)ソリューションを、再販、セット提供、ホスティング、パートナー企業との連携などを通じて提供することで、新たな価値を創出することもできます。これには、ソブリンクラウドバンドル、規制に準拠したAIアシスタント、業界特化型アプリケーション、政府機関や規制対象業界向けにカスタマイズされたマネージドAIプラットフォームなどが含まれます。多くの場合、顧客はインフラ、ソフトウェア、コンプライアンス機能を個別に構築するよりも、信頼できる統合ソリューションを求めるでしょう。
  • 主権要件への保証とマネージド・オペレーション
    顧客は今後、分散したAI環境全体で、管轄区域、セキュリティー、ガバナンス、コンプライアンスに関する要件を確実に適用するための支援を、ますます必要とするようになります。CSPは、マネージド相互接続、ポリシー対応ネットワーキング、トラフィックのローカライズ、可観測性、セキュリティー・オーバーレイ、運用保証といった分野で役割を果たすことができます。これにより顧客は、AIのパフォーマンスだけでなく、適切に管理・統制されていることも証明できるようになります。

すべてのCSPがこれら4つの機会すべてを追求するわけではありませんが、進むべき方向は明確です。政府や企業が、AIの実行場所、データの移動および管理方法、デジタルサービス運用管轄区域に対する管理を強化しようとする中、ネットワークはパフォーマンスとコンプライアンスの両面で中心的な存在となります。

ソブリンAIはコンピューティング能力だけでは実現できません。インフラ、ソフトウェア、ポリシー、信頼で構成されるエコシステムが必要であり、その中心にネットワークがあります。ネットワーク事業者にとって、これは単なる脇役ではありません。AIインフラとサービス開発の新潮流を戦略的に実現する役割を担う機会となります。

電力効率に優れた大容量伝送から、暗号化、相互運用性、高度なソフトウェア自動化に至るまで、Cienaのテクノロジーとサービスは、ソブリンAIイニシアチブを支えるために必要な、拡張性とレジリエンスに優れた高性能ネットワークをCSPが構築・運用できるよう支援します。