今年開催されたOFC2025は、昨年のOFC2024と比較して、来場者数は約34%増の16,700人、出展社数が35社増の685と、2003年以来最大規模のOFCとなり、AIが及ぼす光通信業界への影響が色濃く出たイベントとなりました。
最近、CienaがCensuswide社の協力を得て実施したグローバル調査によると、13カ国1,300人以上のデータセンターの専門家の半数以上(53%)は、今後2~3年でAIワークロードがDCIインフラへの最大の需要を生み出すと回答し、クラウドコンピューティング(51%)やビッグデータ分析(44%)を上回り、今後5年間でDCI帯域幅の需要が少なくとも6倍に増加する事が判明しています。
この調査結果を裏付ける様に、AIやクラウドコンピューティングを支える基盤として、特に高帯域化、低消費電力化と効率化、機能統合化と高密度化を特徴に光通信技術が新たなイノベーションの段階に入っている事がOFCで実感出来ました。
また、この流れは、Cienaが推し進める技術イノベーションや製品開発の取組みと完全に一致しています。一例を挙げるならば、CienaはWaveLogic 6で業界に先駆けてコヒーレントDSPに3nmシリコン技術を採用、2024年には製品を市場投入しAI需要に対応する広帯域、低消費電力を実現するネットワーキングソリューションを適用した多くのユースケースを世界規模で展開しています。
また、世界のハイパースケーラーやAIソリューションプロバイダーは、高性能、低消費電力、柔軟な接続性を備えたスケーラブルなデータセンター設計を実現するイノベーションを光通信技術に期待しており、Cienaは業界最先端のデジタルコヒーレント光通信技術、オープン性の高いオプティカルラインシステム、高度なネットワークオートメーションツール等を中心に、その期待に応える内容をOFCにて披露しました。
主な展示内容は以下となります。
1.オプティカルシステムのポートフォリオ強化
・オプティカルランシステムRLSシリーズ
- 海底、長距離、DCIネットワークで培ったROADM機能をメトロとエッジへ拡張する製品ラインアップの発表がありました。メトロ向けのRLS R2 300mm with HD RLAは2スロットタイプの小型モデル、エッジ向けのRLS Edgeはピザボックスタイプのモデルになります。小規模拠点やエンドユーザー拠点向けに小型化や機能最適化されたモデルとして市場に投入される予定です。
- また、ハイパースケーラーのネットワークを支えるRLSの光ラインアンプを筐体内に高効率に収容するRLS Multi-Railを参考出展しました。光ラインアンプ拠点の電力効率とスペース効率を劇的に向上させながら、より多くの伝送容量をサポートする事が可能になります。
・トランスポンダー製品Waveserverシリーズ
- O-NID(OTN Network Interface Device)と呼ばれていた製品群が、Waveserver Eシリーズ(E10とE200)として生まれ変わり、GbE/10GbE/25GbE/100GbEやOTU2/2e、OTU4をコスト効率よく収容可能し、マックスポンダー(MOTR)、トランスポンダー(OTR)、ADM等のアプリケーションに対応します。オペレーティングシステムや操作感は、Waveserverプラットフォームファミリーと一貫性があり、Eシリーズを運用管理し易くなっています。
- Waveserverの筐体内臓型光フィルターモジュールCMD12を展示しました。CMD12によりWaveserver単体で12波長多重伝送が可能になる予定です。
- WaveLogic 6 Nanoをライン側に収容可能なsledモジュールを展示しました。モジュールあたり6チャネル(ライン側WL6n x 6、クライアント側QSFP-DD800 x 6)をサポート予定です。
- WaveLogic 6 Extreme 1.6Tb/s コヒーレント技術がQKD(Quantum Key Distribution, 量子鍵配送)とPQC(Post Quantum Cryptography、耐量子計算機暗号)をサポートする予定です。QKDとPQCを組み合わせたより強固な量子セキュア通信を実現する仕組みについても説明しました。
2.光通信技術の強みを基盤にIn and Around Data Center向けソリューションを強化
・メトロDCI向けソリューション
- 収容効率、電力効率、コスト効率に優れるコヒーレントプラグとしてWaveLogic 6 Nano 800Gを出展し、動体展示を行いました。WaveLogic 6 Nanoは、まもなく市場投入されます。
・データセンターキャンパス向けソリューション
- 業界初となる1.6T Coherent-Liteの動体展示を行いました。この、コヒーレント・プラガブルトランシーバーは、WaveLogic 6 Nano DSPチップによりサポートされるデュアル800Gデータパスを搭載し、最大距離20km程度と低遅延性能を実現します。拡大するデータセンターキャンパス向けのソリューションになります。
・データセンター内向けソリューション
- 1.6T Coherent-Liteは、データセンター内での使用も想定しています。通信容量の増加が加速するなか、従来のテクノロジーは物理的な限界に直面し、デジタルコヒーレント光通信技術がデータセンター内やデータセンター周辺に普及し始めるとCienaは考えています。
- 市場投入を計画している3nmプロセスの224G SerDesチップレットによる448 Gb/s PAM4のIMDD伝送を動体展示しました。また、OFCの会期中に業界初の3.2T伝送(448Gb/s x 8で2km)に関する共同プレスリリースを発表し、今後の3.2T伝送に向けた可能性を示しました。
なお、In and Around Data Center向けソリューションに関しては、こちらの記事も参考にご覧ください。
その他にも、WaveRouter用の1.6Tモジュール、開発中の25GS-PONの動体展示等のソリューション展示があり、拡大するCienaの事業領域を感じる事ができました。
世界の通信需要を牽引するハイパースケーラーや、今や社会と経済の基盤となったデータセンター市場の期待に応えるには、少しずつ改善し続けるだけでは十分ではありません。GPUセントリックなAIの普及促進にネットワークがボトルネックにならないよう、光通信技術が果たす役割はますます重要です。将来を見据えた3.2Tb/s光伝送に向けたイノベーションが、今から楽しみです。
最後に、6月11日から幕張に開催されるインターロップのShowNet(https://www.interop.jp/)にて、WaveLogic 6 Extremeを用いた1波1.6Tb/sの光伝送の動体展示を国内初で行います。
ご興味のある方は、是非、会場まで足を運んで頂ければ幸いです。