TM ForumのNaaSフレームワークによってネットワークとOSSを分離しデュアルスピードのデジタル変革を実現
TM Forumが提唱するNetwork-as-a-Service(NaaS)フレームワークは、オペレーション・サポート・システム(OSS)とビジネス・サポート・システム(BSS)を基盤ネットワークから分離することで通信サービス・プロバイダー(CSP)によるデジタル変革を加速させ、サービス・アジリティの向上を支援することを目的に設計されています。このフレームワークではモデル駆動型の抽象化とオープンAPIを活用して、あらゆるネットワーク機能とリソースを物理か仮想かの別なくサービス・カタログに公開し、CSPがサービスを動的に構成するとともにサービスのライフサイクル管理を自動化できるようにします。
NaaSのもう1つのコンセプトとして登場したビジネス・モデルは、一般的なSoftware-as-a-Service(SaaS)モデルによく似ています。CSPがネットワーク・サービスを公開してエンタープライズ・ビジネス・サービスを提供し、エンドカスタマーがセルフサービス・ポータルのようなデジタル・チャネルを使って場所と時間を問わずに必要な量のサービスを利用できるようにするものです。しかし一見異なるこれらのNaaSのコンセプトは方向性が同じであり、補足的な関係にあります。これらはOSS/BSSとネットワークをつなぐ通信の単純化と標準化を通じてCSPの能力を高め、5Gネットワーク・スライスのようなオンデマンド・サービスを成功に導いてくれます。
アニル・ラオ(Anil Rao)氏はAnalysys Mason社で主席アナリスト兼リード・アナリストとしてネットワークとサービス自動化の調査に携わり、事業者のデジタル変革を後押しする既存と新時代の運用システムを題材にした幅広い内容を取り扱っています。
ラオ氏の重点分野はサービス作成の自動化、NFV/SDNベースのネットワークでのプロビジョニングとサービス運用、5G、IoT、エッジ・クラウド、および分析、ML、AIの活用による運用効率とアジリティの向上など多岐にわたり、運用の自動化とゼロタッチ・ネットワークに関する幅広い課題も取り扱っています。
独自仕様に基づくOSS/BSSとネットワークの統合がデジタル変革とサービス・アジリティの課題を誘発
共通の標準が存在しないがために、CSP各社は長い間独自仕様のインターフェイスを用いてOSS/BSSコンポーネントと基盤ネットワークを緊密に統合することでそれぞれの製品を展開してきました。このアプローチは収益化までの時間の短縮などの短期的なメリットを提供しますが、長期的にはコスト面での深刻な問題をもたらします。無秩序に拡大する大規模な統合に対応するために組織の内外に大勢のスタッフが必要となり、ソフトウェアの統合と保守にかかるコストが増大し続けます。
それとは別にこのアプローチの副次的影響として、サービス設計、アクティベーション、保証などの日常の運用業務が非効率な手作業に依存しすぎるという問題があります。個々の統合作業は戦術的に製品の観点から実施され、ソリューションに自動化が組み込まれていたとしても本質的には限界があり、実装が困難であることが少なくありません。ネットワーク・エンジニアリング部門と運用部門ではこうした限界への対策として手作業を伴うプロセスを開発し、ついにはそれが運用手順の標準となりました。限られた人材にだけ知識が偏るようになるため、変更へのハードルが次第に高くなっています。
これらは、CSPが以下の目標を達成するためにサービス・アジリティの向上とデジタル変革の加速を模索する中で直面する最大の障害の一部にすぎません。
- OSSを単純化および変革してNaaSなどの新しいビジネス・モデルに対応
- 5Gサービスの商用化までの時間を短縮
- 無駄のない運用に変革することで運用コストを削減
- ネットワークのディスアグリゲーションおよび仮想ネットワークやSoftware Defined Networkへの変革を実現
TM ForumのNaaSフレームワークによるOSSからのネットワークの分離
NaaSフレームワークはOSS/BSSからネットワークを分離することで、CSPが複雑に絡み合った従来の統合アーキテクチャの課題を克服できるようにします。これを実現するために、物理および仮想の基盤ネットワークの複雑さを隠蔽する抽象化レイヤーを取り入れ、上位レイヤーのOSSとの通信にはオープンな標準のノースバウンドAPIを、下位レイヤーのネットワーク・ドメインのコントローラーとの通信にはオープンな標準のサウスバウンドAPIを使用します。統合を容易にし、CSP、顧客、パートナー間に安定した通信を提供するために、NaaSフレームワークはオープンAPIと業界標準にも対応しています。
CSPがネットワークとOSSを対象としたデュアルスピードのデジタル変革戦略を採用できるのは、このオープンなアプローチのおかげです。
- ネットワークの変革:ネットワークのディスアグリゲーション、Software Defined Network(SDN)のスケーリング、クラウド化と自動化などの戦略的なネットワーク変革イニシアチブのペースが鈍化しています。その理由はOSSに大幅な変更を加えない限り、先に進めなくなっているからです。これはOSSとネットワークが密接に結合されているからであり、また、既存の独自仕様の統合において長年にわたってCORBA、SNMP、MTOSI、XML、FTP、REST、さらにはCLIにいたるまでの数多くの統合技術を採用したベンダーに固有のNMS、装置のタイプに固有のEMS、ドメインに固有のインターフェイスが取り入れられてきたからです。NaaSの抽象化レイヤーはこれらの統合技術を最新のアプローチに置き換えることにより、このような複雑さを隠蔽します。具体的なアプローチとしては、ネットワーク装置に組み込まれる下りインターフェイス用のYANGや、OSSとの統合に使用されるONFおよびIETFベースのノースバウンドAPIなどがあります。このような抽象化レイヤーの機能を使用することで、CSPはOSSに直接影響を与えることなく、自社に都合の良いペースでネットワーク変革の戦略を推進することができます。
- OSSの変革:CSPが5G時代に成功を収めるには、自動化された最新のOSSの存在が極めて重要になります。企業にデジタル・サービスとカスタマー・エクスペリエンスを提供し、最新のオンデマンド型サービス(ネットワーク・スライスや新しいNaaSベースのビジネス・モデルなど)に対応するには、セルフサービス方式の注文管理やサービス・オーケストレーション、リアルタイムのインベントリー、エンドツーエンドのサービス・ライフサイクル自動化などの機能が必要です。NaaSの抽象化レイヤーを利用すれば、OSSがONF T-APIなどのNaaSレイヤーで定められている下りインターフェイスに準拠するだけですむので、CSPは自信をもってOSSの最新化に臨めます。加えてNaaSレイヤーのサービス公開機能を利用すれば、CSPはNaaSビジネス戦略の一環としてオンデマンドのエンタープライズ・ビジネス・サービスを提供できます。
Telefonica社のiFUSIONはNaaSフレームワークに準拠
Telefónica Germany社は、階層型SDNコントローラー・アーキテクチャの実装により、オープン端末(OT)とオープン通信システム(OLS)を含む一部の要素が分離された、ディスアグリゲーション型の光ネットワークを実現しました。同社ではマルチベンダー構成の光ネットワーク全体で接続サービスを管理するために、Software Defined Transport Network(SDTN)コントローラーとしてNaaSに準拠したBlue PlanetのMDSOを導入しています。
この詳細については、次のリンク先からAnalysys Mason社の導入事例をご参照ください。
Telefonica Germany社、iFUSIONトランスポートSDN戦略の遂行に向けBlue Planetと提携(Telefónica Germany is partnering with Blue Planet to execute its iFUSION transport SDN strategy)
TM ForumのNaaSフレームワークはモデル駆動型の抽象化とオープンAPIに対応しているため、CSPはサービス・ライフサイクル管理の自動化を実現し、企業顧客が自らサービスを管理できるようにすることができます。また、標準に基づいた、運用に対するシンプルなアプローチは、CSPにとってデジタル変革を加速させて5Gの技術とサービスの導入に対応する基盤となります。