Cienaは、1波長あたり最大1.6Tb/sのデータ伝送能力を持つ初の光伝送モデム「WaveLogic 6」の商用展開を2024年前半に開始します。この次世代のコヒーレント光伝送技術が通信事業者のビジネスにどのように貢献できるかについてご説明します。

WaveLogic 6(以下、WL6)」は、Cienaが2024年前半に提供を開始する次世代のコヒーレント光伝送技術です。伝送容量は現行の「WaveLogic 5(WL5)」の2倍、1波長あたり最大1.6Tb/s(1,600Gb/s)に達します。

WL6ではWL5と同様、WL6を搭載した2つの製品がラインナップされます。1つが、この1.6Tb/s伝送を実現する「WaveLogic 6 Extreme(WL6e)」で、光伝送装置のラインカードなどに搭載されます。もう1つが、コヒーレントプラガブル光トランシーバの「WaveLogic 6 Nano(WL6n)」で、こちらも最大伝送容量が、現行のWaveLogic 5 Nano(WL5n)の400Gb/sの2倍の800 Gb/sに向上します。

この伝送能力の向上は、通信事業者やデータセンター事業者のビジネスに大きなメリットをもたらします。光伝送モデムの伝送能力が2倍になれば、同じネットワーク容量を現在の半分の装置・光ファイバーにより整備可能で、設備投資(CAPEX)を大幅に削減できるからです。

WL6は、日本の通信事業者が直面している「収益拡大が難しくなる中でいかにして大きなトラフィックの伸びに対応できるインフラの整備をするか」という課題を解決する有力な手立てとなるはずです。

ここで重要なのが、通信事業者に広く利用されている統合光伝送プラットフォーム「Ciena 6500」やDCI向け小型・高性能トランスポンダー「Waveserver」などの光伝送装置では、実装されているラインカードをWL6e搭載製品に入れ替えることで容易に新しいテクノロジーにアップデートできることです。既存の光伝送プラットフォームをそのまま利用して、ラインカードだけを新しいものに交換することで、消費電力を増やすことなく、高速化を図ることできるのです。

WL5eを搭載したラインカードを2倍の容量を持つWL6e搭載のラインカードに更新することで、ビットあたりの消費電力を50%まで削減することが可能になります。

その前の世代のWaveLogic搭載製品からの更新する場合は、削減幅は更に大きくなります。例えば2017年にリリースされた「WaveLogicAi」のラインカードをWL6eに入れ替えた場合の削減率は実に70%に及びます(図表)。

最近の電気料金の高騰にさらされている通信事業者、データセンター事業者にとって、電気料金を抑えつつ、ネットワークの高速・大容量化を実現できるWL6は魅力的な選択肢といえるでしょう。

通信事業者やデータセンター事業者にとってもう1つ、重要なポイントとなるのが、この電力消費の削減が、サスティナビリティの重要な要素であるCO2削減に直結していることです。

2020年に菅義偉前首相が打ち出した2050年までのカーボンニュートラル実現という目標に向け、産業界はCO2削減に向けて一斉に動き出しています。

例えば、住宅業界では木材の多用、空調機器の効率化、作業工程の見直しなど多用な分野でCO2削減に向けた取り組みが進められています。運輸・物流業界では、燃料電池やカーボンニュートラル燃料の導入などにより大幅なCO2削減を実現しようとしています。

公益事業に携わる通信事業者は、日本のCO2削減の取り組みをリードすることが求められているといえるでしょう。大手通信事業者は2030年度から2040年度にかけてCO2排出量をゼロにする方針を表明しています。

急増するトラフィックへの対応とカーボンニュートラルの実現を両立させるという難しい課題をクリアする上で、WL6は重要な役割を果たすことになるはずです。

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図表 WaveLogic 6 Extremeの導入による省スペース化、省電力化

あらゆる場所で800Gb/sが利用可能に

通信事業者や/データセンター事業者にとってWL6の登場で期待できるメリットとして大容量通信の利用シーンの拡大があげられます。

メトロROADMネットワークにおいて、WL6eは1波あたり1.6Tb/sの伝送能力を有しており、これは800GbE(ギガイーサ)2本分に相当します。光伝送では、伝送距離が長くなると、光信号の減衰・拡散などで伝送容量が低下しますが、WL6eでは東京・大阪間程度の距離であれば1 Tb/sでの容量が確保できます。さらにWL6eは、再生中継することなく「日本全国どこでも」800Gbps接続の伝送容量をサポートします。

プラガブルモジュールのWL6nは1,000kmまでの伝送距離で1波長あたり800Gb/sをサポート、それ以上の距離でも400~600Gb/sでの通信を可能にしています。

WL6eでは、Cienaは最新の3nmCMOSをベースとした200GbaudコヒーレントDSPや広帯域光デバイス技術などによって、こうしたイノベーションが可能になったのです。

WL6によりあらゆる場所で800Gb/sが利用できるようになれば、通信事業者の事業機会は、大きく広がります。

高い省電力性能で運用コスト(OPEX)と環境負荷を低減、長距離高速データ伝送により新たな事業機会を拓くWL6は、次世代ネットワーク構築の重要な手立ての1つとなるでしょう。