Brian Lavallée (ブライアン・ラヴァージュ)は、Cienaパケット・ネットワーキング・ソリューションのテクノロジー&ソリューション・マーケティング担当ディレクターです。

現在の市場では、今にも起ころうとしている5Gモバイル・ネットワークへの動きについて議論が加熱しています。 5Gの仕組み、5Gに対する正しい期待、5Gがもたらす未来についてブームとも言える議論が起きています。 このブログでは、新しい5Gの世界を詳しく解説し、事実とフィクションの線引きを試みます。

5Gとは何でしょうか?

4Gの後に続く次世代モバイル・ネットワークという以外、実際に理解している人はほとんどいません。 なぜなら、5Gはまだ標準化が終わっておらず、当分の間は作業が完了しないと考えられているからです。 しかし、この業界には楽観主義者がそろっているため、この次世代のモバイル・ネットワーク・インフラストラクチャーのパフォーマンスの向上について予想や期待が鳴りを潜める様子はまったくありません。

5Gには2つの見方があります。 サービス主導の見方とネットワーク主導の見方です。 ここでは、このブログの趣旨にのっとり後者を中心に見ていきましょう。

ワイヤレス・ネットワーク業界では、装置ベンダー、モバイル・ネットワーク事業者(MNO)から、アナリストに至るまで、さまざまな関係者が5Gモバイル・ネットワークに対して多様な見解を持っています。 モバイルの世界では、次のようなパフォーマンスの向上が起きると期待されていますが、これはほんの一部に過ぎません。

  • 帯域幅が単位エリアあたり最大で1,000倍拡大
  • 接続デバイス数が100倍に増加
  • 屋外のモバイルデバイス接続速度が最大10Gbpsに高速化
  • 99.999%のネットワーク可用性が実現
  • 100%のネットワーク・サービスエリアが実現
  • エンドツーエンドのラウンド・トリップ遅延(レイテンシー)が1ミリ秒以下に短縮
  • ネットワークの消費電力が最大90%削減

お分かりのように、5Gは単に帯域を大幅に拡大するだけでなく、モバイルビデオの人気の定着に見られるような携帯電話加入者の大きな期待に応えます。 業界関係者が費用対効果に目配りしているうちに、これらの大きな期待のいくつは矮小化されていくかもしれませんが、より積極的に追及されているものもあります。 とはいえ、私たちはこの重要な次世代ネットワーク・インフラストラクチャーの「高め」を撃つ必要があります。 大きなことを成し遂げたいなら、あえて大きな夢を描くことが重要です。

「大きい」というのは極めて主観的な言葉です。

5G対応のネットワークを構築する方法は?

どうすれば速度、レイテンシー、サービスエリアを能動的に向上させることができるでしょうか。 それには、WiFiセル、スモールセル、古くからあるマクロセルなどの異なるセルタイプから構成される、一般にHetNetと呼ばれる異種混在ネットワークを構築します。 この方法により、技術的、経済的な側面から最も合理性のあるセルタイプをインテリジェントに活用することができます。その結果、全体的なパフォーマンスを大幅に向上させるように最適化された、極めて柔軟な5Gモバイル・ネットワーク・アーキテクチャーを構築できます。

5Gネットワークへの進化は、エンドツーエンドのネットワーク・インフラストラクチャー全体に影響します。つまり、その影響は、無線アクセス・ネットワーク(RAN)とEvolved Packet Core(EPC)の仮想化から、無線インターフェイスのアップグレード、さらには無線ベースのネットワークと有線ベースのネットワークを相互接続するモバイル・バックホール・ネットワーク(MBH)まで幅広く及びます。 5Gで期待される大幅な容量、可用性、レイテンシーの向上は、最終的に多様なレベルでMBHネットワークに負荷をかけます。

これらの容量の需要に対応する方法は?

容量の需要拡大には、イーサネット速度を1GbEから100GbE(数年以内には400GbE)に高速化することで対応します。速度は、WiFiセル、スモールセル、マクロセル、または複数のセルサイトのトラフィックを集約するコアノードに必要となる予想トラフィックに応じて選択します。 後者は、コア・ネットワークから、アクセス対象のコンテンツをホスティングする巨大なデータセンターまでのトラフィック量を著しく増やします。

コア・ネットワーク帯域の拡大には、100G、200G、さらに高速なコヒーレントDWDMレートを活用することで対応します。これは、4Gの導入が増えていることで、すでに実現されています。 端的に言うと、世界中のネットワークでアクセス速度が高速になっています。

高可用性には、大半のサービス事業者ネットワークに導入済みのプロテクションと冗長化の機能によって対応します。 G.8032イーサネット・リングなどのネットワーク・プロテクション・オプションにより、ネットワーク事業者はアグリゲーション・ネットワークとコア・ネットワークの高可用性を保証できます。

ノード自体の高可用性は、二重冗長電源や予備のバッテリーやジェネレーターなどの装置または電源の冗長化によって達成します。 ネットワークのインテリジェンスにより、経路変更またはスイッチングによって障害または輻輳のあるノードを迂回できるようになるので、モバイル・ユーザー(人またはマシン)は、回避不能な障害が起きた場合でも一貫したネットワークの可用性を享受できます。 マイクロサービスなどのソフトウェア手法を駆使する方法でも、5Gモバイル・ネットワークの信頼性と拡張性を高められます。

1ミリ秒のレイテンシーは5Gで実現可能?

5Gネットワークのレイテンシーは4Gネットワークの5分の1に短縮されると予想されており、達成が難しい1ミリ秒の目標がすでに議論されています。 既存の知識では決して打ち破ることができない物理的な基本法則が存在しています。たとえば、光の速度などです。 光ファイバーコアに固有の特性により、光ファイバー内の光伝搬は真空時に比べて約3倍遅くなります。

ワイヤレスMBHは、無線ベースの通信媒体を使用するので光ファイバーより高速ですが、容量、伝送距離、可用性という点で大きな制約があります。 それにも関わらず、ワイヤレス・バックホールはほとんどのMNOネットワークで確実に数を増しており、今後も設置され続けるでしょう。 光ベースのMBHまたはワイヤレス・ベースのMBHのどちらが優れているかという問題ではなく、今後も両方が必要になります。

大局的に見ると、遅延を1ミリ秒に抑えなければならないモバイルサービスの場合、モバイルユーザーから1km以内で相互接続し、1ミリ秒のレイテンシーを達成するネットワーク以外の手法を用いる必要があります。 モバイルエッジ・コンピューティングにより、ITおよび関連するクラウド・コンピューティング機能をRANに直接的に配置する状況が加速されます。 モバイルユーザーからできるだけ近い場所にコンテンツ、サービス、アプリケーション、機能を配置することで、レイテンシーを大幅に向上させることができます。

しかし、既存のモバイル・ネットワークの再設計に多額の費用がかかることを考慮し、一部の事業者は5G標準で1ミリ秒のレイテンシーが標準化される可能性、多少は緩和される可能性、あるいは完全に除外される可能性を検討し始めています。 時間が経ってみなければ分かりませんが、レイテンシーの短縮を実現することで新しいサービスとそれに伴う収益源が生まれ、待ち望まれているMNOの差別化が促進されるため、4Gよりもレイテンシーを短縮する目標は維持される可能性が高く、標準化される可能性もあります。

それが意味するものは?

新しい5Gネットワークのあるべき姿についてはまだ議論の最中ですが、5Gがもたらす将来は、ネットワーク・パフォーマンスという点であらゆるものを変化させ、驚くべき数の新しいサービスを実現します。 登場が待たれる革新的なサービスのほとんどが、今はまだ誰も夢想だにしていないものになるでしょう。

パフォーマンス目標がどのようなのものになるにしろ、MBHネットワークはそれを処理できるでしょうか。 私はできると思います。研究開発分野の専門家コミュニティに目標を伝え、その後は邪魔をせずに前進を望む人間の本質が開花するまで待つことが、不可能と思われる目標を達成する最善の方法だと信じているからです。

ほんの数十年前に、人類のすべての英知を手の平の上で利用できるようになると誰が想像したでしょうか。 この新しい時代には、もう図書館に足を運ぶ必要がなく、図書館が私たちのいる場所まで移動してくれます。 5Gがすべてを変えるであろうことは、少しも不思議なことではありません。一方、5Gネットワークの正確な全容はいまだ謎に包まれています。しかし、今日のエンジニアが5Gの実現に向けて挑戦することは疑う余地がありません。

参考資料: 「Understanding 5G - Perspectives on Future Technological Advancements in Mobile」2014年12月(GSMA Intelligence)