Chris+アンティリッツ+TBRクリストファー・アンティリッツ(Christopher Antlitz)氏は、Technology Business Research(TBR)の通信プラクティスの主任アナリストです。クリスは、通信ベンダーと事業者のグローバル・エコシステムに加え、NFV、SDN、エッジ・コンピューティング、デジタル変革、IoT、5Gの進展を含むが、必ずしもこれらに限定されない分野の主要な動向を調査しています。また、Webスケール市場、特に「Super 7」のWebスケール企業の調査も担当しています。

 

現在、通信業界全体にわたり、ネットワーク事業者は最新化の取り組みに専念しています。通信業界は、早期導入を積極的に進めたフェーズを完了し、重要な進展の時期を迎えていますが、最新化が提供する真の最終的なあり方、つまりWebスケール運用に必要な能力と柔軟性を達成するには、まだやるべきことが数多くあります。

Webスケールに至る道のりとしての最新化の特性を示すとしたら、「関係性」であるというのが私の意見です。なぜなら、この状況で抜きん出ている企業は、自社ネットワーク環境に次世代インフラを実装し、運用モデルを変革しているからです。これにより最終的に、ネットワーク事業者はより巧みにデータを活用し、ビジネス成果を向上させることができます。たとえば、これらのネットワーク事業者はデータを収益化することによって収益機会を創出し、データを使用して社内業務の運営とプロセスを改善しています。

これは、Technology Business Researchで通信分野の主任アナリストとして職場で私が目の当たりにしてきた最新化の取り組みに照らしてもよく分かります。このブログでは、ネットワーク事業者が最新化の効果を上げるために、どのようにテクノロジーを適用し、企業文化を変革しているかについて重点的に説明します。  

導入事例1:ソフトウェア中心のオープン・ネットワーク

Webスケールのアジリティーを追求している先見性のあるネットワーク事業者は、より高いオープン性、ソフトウェア中心、仮想化を目指して自社システムを最新化しています。

たとえば、自動化が容易な高度にカスタマイズされたシステムを実現するために、ネットワーク・エッジを仮想化している事業者がいます。このアプローチはハードウェアとソフトウェアを分離し、クローズドな独自仕様ではなく、多用途性を備えたオープン装置を使用します。これにより、ネットワークの柔軟性が向上し、インフラ・コストが削減されます。同社は、uCPE(汎用顧客構内設備)上で稼働するネットワーク仮想化ソリューションを使用して、企業顧客向けに同様なアプローチを提供しています。このソリューションにより、企業顧客は、個別のルーター、ファイアウォール、WAN接続用に、単一目的のベンダー固有のハードウェア・スタックを購入する必要がなくなります。その代わりに、各種ネットワーク機能を1台の装置に仮想的にインストールできます。これにより、企業顧客はインフラを迅速に導入し、サービスをオンデマンドで速やかに拡張することができます。

導入事例2:ネットワーク・エッジまで拡張可能な多用途のファイバー・アーキテクチャー

別のネットワーク事業者は、ネットワーク全体の拡張性、効率性、運用を向上するために、ネットワーク・エッジまで拡張可能なファイバー・アーキテクチャーを使用してインフラを変革しています。同社は、有線サービス、無線サービス、ビジネス・サービス用に共通のファイバー・プラットフォームを構築しています。共通のアーキテクチャーを使用することで、物理的な場所に有線設備と無線設備を併設できるようになるため、システム効率が大幅に向上し、顧客により近い場所までファイバーを拡張できます。このファイバー・アーキテクチャーにより、事業者はFTTP(Fiber-to-the-premises)をより多くの顧客に提供することができます。また、はるかに費用対効果の高い方法で、ワイヤレス・サービス・エリア全体にスモールセルを導入できます。

この事業者は、TDMネットワークをパケット・ベースのネットワークに移行することによって、この最新化の取り組みを開始しました。このネットワークは、エンドツーエンドのIP接続とイーサネット接続も提供します。この新しいインフラにより、同社は実現しうる最高のシステム・パフォーマンスを提供し、以前には実現できなかった新サービスをサポートできるようになります。このファイバー・プラットフォームの多用途性とネットワーク・エッジまでファイバーを拡張できる機能の組み合わせにより、厳しさを増す顧客ニーズに対応するためのより高い柔軟性が得られます。また、重要なのは、すべてのサービスに共通のコア・インフラを使用できることです。

最新化の成否を決める企業文化の変革

あらゆる企業にとって最新化は容易ではありません。課題は、厳密にはテクノロジーではありません。さまざまな側面で課題となるのが企業文化です。したがって、事業者がサイロ化されたテクノロジーから脱却して変革を目指すときには、同様にサイロ化されている運用に対するマインドセットも変革する必要があります。このようなマインドセットは、長い年月をかけて企業文化に深く浸透しています。

基礎を固めるためには、戦略について組織全体から支持を得る必要があります。企業トップが直接、創造的破壊への目的意識を喚起し、全社員にビジョンと考えを伝達する必要があります。成果を上げる事業者は、自発的な企業文化の重要性を理解し、このような支援の育成に努めるように経営幹部に協力を要請しています。経営幹部が社内でよりオープンな多用途アーキテクチャーを提唱するときには、企業文化の変革についての考え方を全社員によく説明する必要があります。  

プロフェッショナル・サービスによって必須能力の不足を補充

レガシー・テクノロジー、プロセス、プロトコルが持続可能ではないため、最新化は多くの企業にとって選択肢ではなく必然となっています。スペアー部品の入手が困難になり、また一般に現在の人材は古いネットワーキング技術関連のスキルを備えていません。さらに問題なのは、最新ネットワークに不可欠なソフトウェア・エンジニアリング、データ・サイエンス、分析スキルを持つ技術者も大幅に不足していることです。企業は、従業員のトレーニングに加え、これらの役割を担う新しい人材の確保に苦慮しています。

幸いにも、事業者はこれらの不足を補うために、戦略的パートナーのプロフェッショナル・サービスを利用できます。プロフェッショナル・サービスは、ソフトウェアベースのネットワークに移行するときに特に便利です。このネットワークではサービスの導入が単純化されますが、実装が複雑になる可能性があります。事業者はプロフェッショナル・サービス・パートナーに、これらのよりアジャイルなソリューションを構築できる人材をリクエストしています。さらに、データ分析とインサイトを活用するアプリケーションの開発を依頼することもあります。

プロフェッショナル・サービスのコンサルタントとテクノロジー・スペシャリストは、事業者のサポート・ニーズに応じて、初期のテクノロジーとビジネス・ケースの変革から、プランニングと実装、さらに完全な導入まで、最新化のライフサイクルのどの段階からでも支援を開始できます。さらに、プロフェッショナル・サービス・チームは、企業スタッフに新しいインフラの使用方法をトレーニングすることもできます。

信頼できるサービス・パートナーへの期待

適切なリソースの選定は、最新化の行程を開始する際の重要なステップであり、これを正しく行うために細心の注意を払う必要があります。

ネットワーク最新化を推進するための最高のパートナーは、通信業界を深く理解し、契約対象のお客様に包括的なサービスを提供します。既存のネットワーク・インフラを監査し、会社が抱える市場の重要課題、技術面と財務面での要件を踏まえたうえで、望ましい最新化の「最終的なあり方」を決定できるコンサルタントを擁する業者を見つけましょう。また、最高のパートナーは、インフラの分析、プランニング、設計、導入、試験とテストに全責任を負い、新しいシステムの適応可能性と将来のサービスに対応する拡張性を保証します。最新化されたネットワークは、より迅速に新サービスを市場投入できるように、重要なプロセスを自動化して手作業を削減する必要もあります。

固有のニーズに対応する信頼できるパートナーを見つけるには、検討対象のベンダーが「約束を遂行する」かどうかを確認します。請け負った変革によってビジネス成果が向上した実例を示すように求めて、ベンダーに自社の能力を実証するように依頼してください。また、プロジェクトで直面した問題点について質問し、その経験から教訓を得てどのようにサービスとプロセスを改善したかについても尋ねます。経営幹部が熱意を持って推進できる最新化の事例を策定できるかどうかを確かめましょう。また、運用とサービスの柔軟性を保証するWebスケール・システムを実装した実績を持っているかどうかも確認します。Webスケールは未来であり、スキルと豊富な経験を備えたプロフェッショナル・サービス組織だけがお客様を到達点へ導くことができます。信頼できるパートナーと連携することにより、最新化の道のりを成功裏にスムーズかつより迅速に、リスクを抑えて、完了することができます。