Hideki Imaizumi, Consultant, Sales Engineering
生成AIの登場は、ITインフラの主役を変えつつあります。世界で急成長を遂げているのが、AI特化型クラウドやGPUプールを運営する新興勢力「ネオスケーラー」です。彼らは数万基の最新GPUをオンデマンドで提供し、大規模AI学習を加速させており、いまや米国、欧州のみならずアジアをも含むグローバル地域で登場しています。こうした潮流は日本にも広がりつつあり、GPU-as-a-Service(GPUaaS)を提供する事業者が台頭し、生成AI開発と運用、学術研究の需要を支えています。総務省の情報通信白書(令和7年版)によれば、日本のDCサービス市場(売上高)は2023年の約2.7兆円から2027年には5.1兆円(CAGR 13.2%)に急拡大します。
しかし電力・土地不足に伴い、データセンター(DC)の分散化は避けられません。莫大な電力を消費するAIインフラは、もはや単一のDCに収容できないのです。地理的に点在するDCのGPUやデータを、あたかも1つの巨大DCのように協調させるには、高速の動的接続が不可欠です。
このような状況の中、直面する課題は分散データセンター間の接続であり、従来の静的な接続方法では開通に数週間を要し、急なトラフィック変動や新サービス立ち上げへの対応が困難です。今求められているのは、処理状況に応じて数分で大容量回線を開通・停止できる「オンデマンドDC間接続サービス」です。既に米国では、ハイパースケーラー間の柔軟な帯域共有を可能にするサービスが開始、運用されています。本記事では、この動的接続モデルが日本のAIインフラにもたらすインパクトと、Ciena装置によって実現するオンデマンドDC間接続サービス「Fabric Exchange」の全貌をご紹介します。
Fabric Exchangeの仕組み
Fabric Exchangeとは、データセンター間の接続を「先回りして構築(プリビルド)」することで、ネットワーク利用の柔軟性と俊敏性が向上するオンデマンドDC間接続サービスです。従来のネットワーク構築は、需要が発生してから設計・工事を始めるため、開通までに数か月を要し、ビジネスの俊敏性を著しく阻害していました。このオンデマンドDC間接続サービスは、この課題を解決するために生まれた革新的な光波長相互接続プラットフォームです。需要発生を「待つ」のではなく、あらかじめ主要データセンター間にCienaの大容量光ネットワークを「プリビルド」しておき、この巨大な光のスイッチングファブリック上で、参加企業は必要な帯域をオンデマンドで即座に確保できる、それを提供するのが「Fabric Exchange」サービスです。
従来のサービスとの違いは、開通までの時間が数か月から数分へと劇的に短縮される点に集約されますが、その背景にはネットワーク構築の思想における根本的な違いがあります。従来の専用線や波長貸しは、ユーザーから注文を受けてから設計を開始し、物理的な工事や手動設定を行う「需要ベース」のモデルでした。これは手続きが煩雑な上、変化の速いAI・クラウドビジネスにおいて致命的なリードタイムを生み出します。加えて、データセンターから通信事業者の局舎(Meet Me Room)まで接続するネットワーク・サービスをユーザー自身が準備する必要がありました。一方、Fabric Exchangeは「プリビルド」モデルを採用することで、物理的なネットワークは通信事業者により既に完成しており、ユーザーのエンドツーエンド接続要求はウェブポータルを通じたソフトウェア上の設定変更のみで完了します。これは、レガシーな静的クロス接続から、近代的なソフトウェアドリブンのオンデマンド接続への移行を意味します。単なる高速化ではなく、ビジネスの俊敏性を根底から変革するパラダイムシフトなのです。

経済合理性の観点から困難だった「プリビルド」モデルを実現するのは、Cienaの先進技術です。まず、業界をリードする光伝送装置「WaveLogic™」のコヒーレント光伝送技術を、高度にプログラマブルな光ラインシステムと組み合わせることで、1本の光ファイバーで伝送できる容量を極限まで高め、少ない物理インフラで経済的な大容量ネットワークの事前構築を可能にします。その上で、ネットワーク管理プラットフォーム「Navigator Network Control Suite(NCS)」により、このリソースプール化された光インフラを完全に制御します。そして、Navigator NCSが提供するオンデマンド型の専用帯域幅向けのオープンなAPIにより、通信事業者のサービスポータルとシームレスに連携し、少ない手順でエンドユーザー自身が光波長のプロビジョニングを完了できる「セルフサービス体験」を実現します。世界最高水準の光ハードウェアと、実運用で証明された高度な自動化ソフトウェアの統合。この強力な組み合わせこそが、革新的なビジネスモデルを技術と経済性の両面から支えるCienaの核となる強みです。
このソリューションの主なユーザーは、ハイパースケーラー、AIインフラ事業者、大手コンテンツプロバイダーなど、マシン間の膨大なデータ通信を日常的に行う組織です。利用シーンもAIの進化と共に変化しており、複数のAIファクトリー(データセンター)に分散した大規模データを転送する「AI学習」に加え、今後は分散したGPUクラスターが連携して処理を行う「AI推論」のための超低遅延接続の需要も本格化します。これらは予測が難しい急峻な帯域増減を必要とするAIワークロードであり、オンデマンドで即座にデータセンター間を接続できるサービスが不可欠です。冒頭でご説明したとおり、日本ではデータセンター新設が相次いでおり、企業のAI活用が国家的なテーマにもなっています。事前にDC間を接続しておく「プリビルド」戦略は、こうした国内の旺盛な需要に即座に応え、ビジネスチャンスを逃さないための最も有効な手段です。CienaのオンデマンドDC間接続サービスFabric Exchangeは、日本のAIビジネスを加速させる“デジタル大動脈”となる重要な社会インフラなのです。



