世界で最も技術が進み、成熟し、かつ競争の激しい通信市場の1つである日本のモバイル通信市場では、新しい時代を迎えました。楽天モバイルが新しいSIMカードの出荷を登録ユーザー向けに開始したのです。

楽天モバイルは、今や日本で4番目のモバイル・ネットワーク事業者であり、全国にモバイル・サービスを提供します。 同社は、自社ネットワークを新規に構築するとともに、KDDI株式会社および沖縄セルラー電話株式会社とローミング契約を交わして、LTEサービスを全国に展開します。自社ネットワークによるサービスエリアは継続的に拡大していきます。 楽天グループは、「楽天スーパーポイント」などを含む「楽天エコシステム」を活用した柔軟なサービスプランを提供することで、パーソナライゼーション企業としての評価を高めようとしています。

一般的な社会通念では、既に強固な企業が地盤を築き、高い参入障壁のある成熟市場に参入するのは避けた方がよいと言われています。これは、まさに日本のモバイル通信市場に当てはまります。 では、楽天モバイルはどのように参入を果たすことができたのでしょうか。

それは、一般的な社会通念に従わなかったからです。

2019年以降を見据えたリセット

モバイル・ネットワークのインフラ構築には、専用機能を提供するよう設計された装置が使われており、ハードウェアとソフトウェアが緊密に連携しています。多くの場合、サービスも組み合わされています。 このアーキテクチャは、元々は固定回線やファックス機、音声通話をサポートするように設計されたネットワークで使用され、これまで30年間にわたって十分に機能してきました。 これとは対照的に、楽天モバイルは最初から、日本のスマートフォン利用の現状に合わせて設計した4Gモバイル・ネットワークを構築しています。 この費用対効果の高いネットワークを短期間で稼働させるために、業界アーキテクチャーの通念にとらわれることなく、エンド・ツー・エンドのクラウド・ネイティブ・ネットワークを設計しました。

技術を水平展開

IT組織では長らく仮想化やコンテナ化、自動化の価値というものを認識してきました。成功した導入事例も数多くあります。 ところが、通信業界では未だにこれらの技術が主流とはなっていません。 楽天では、これらのすべての技術のメリットを活かすことにより、IT技術を中核としたMNOとして差別化を図っており、市場の変化へのより迅速な対応、サービスの短時間での提供、そして低コストな運用を可能としています。

破壊的イノベーションは通過点

この Harvard Business Reviewの記事で紹介されているように、破壊的イノベーションとは、ある決まった時点での製品やサービスを指すわけではありません。 むしろ、ほとんどの場合には、破壊的イノベーションは時間をかけた製品またはサービスが進化していくものとして現れます。 今週は、楽天モバイルにとって1つの大きな(かつ非常に重要な)マイルストーンとなりました。 日本の事業者が5Gサービスを開始し顧客が導入するにつれ、さらに多くのマイルストーンが訪れることでしょう。 楽天モバイルは、クラウド・ネイティブ・ネットワークによって迅速に新サービスを立ち上げ市場投入できる良いポジションに立つことができました。一方で、その他の事業者は、4G時代以前に構築したネットワークを創造的に発展させ、5Gやその他の新しいサービスで収益を上げる道を模索しています。

楽天の副社長執行役員、CAO(Chief Architecture Officer)であるタレック・アミン(Tareq Amin)氏は、このビジョンを次のように明快に説明しています。「どうすれば、機敏に動けるでしょうか?それには、クラウド・ネイティブ・ネットワークを構築するしかありません。

Adaptive Network

楽天モバイルのアプローチと、CienaのAdaptive Network™のビジョンは同じ方向性のものです。Adaptive Networkとは、理想的なネットワークの最終形態を示すCienaのビジョンですが、ネットワークの負荷と需要を常に評価することによって、分析とインテント・ベースのポリシーによる自動化を活用し、迅速にスケールアップ・ダウン、自己設定、自己最適化します。 Adaptive Networkにより、ネットワーク事業者は既存のインフラを最適化することが可能となり、新しいテクノロジーと新たな手法を組み合わせることができます。それはキーとなる基本的なエレメントの上に成り立っており、ネットワークとビジネスの成果を別々に向上することもできますが、それらを連携させることでその成果を何倍にも向上することが可能となります。

高まる一方のモバイルユーザーの期待と、それに応えるテクノロジーの飛躍的な進歩は、ネットワーク事業者に前例のないプレッシャーと複雑さをもたらしています。しかし、エンドツーエンドのクラウド・ネイティブ・ネットワークを設計、構築している楽天モバイルのアプローチは、ユーザーの期待を理解しその期待に応えようという姿勢を現わしています。

改めて、楽天モバイルのご成功とアダプティブ・ローンチをお祈り申し上げます。なぜなら、「適者生存」とは、最も適応できたものが生き延びるという意味だからです。